前回の記事「蛇の杖とメデューサの血:AS2012(056)」では「一匹の蛇が巻き付いている杖」を中心に書きました。
今回はそれに関係する「二匹の蛇が巻き付いている杖」に絡めて書いてみます。
伝令使の杖:ケーリュケイオン(古希: Κηρύκειον、希: Kerykeion)
長母音を省略してケリュケイオンとも表記されます。
ラテン語ではカドゥケウス(Caduceus)と呼び、ギリシア神話の伝令の神ヘルメスが持つ杖のことを指します。
これに関する解釈は比較的に簡単です。
肉体の部品の中で伝令の役目をするのは何でしょうか?
それは【遺伝子】です。
この杖を持っているのが古代ギリシャの神様の一人であるヘルメス。
【ヘルメース】古典ギリシア語:Ἑρμῆς, Hermēs
長母音を省略してヘルメスとも表記されます。
元もとはトラーキアのペラスゴイ人の神で、ドーリア人の侵入に従ってギリシア全体に広まった解釈されています。
トラキア(ラテン語:Thracia、トルコ語:Trakya)とはバルカン半島東部の歴史的な地域の名で、現在は3か国に分断されています。
西トラキアがブルガリアの南東部とギリシャ北東部の一部で、近年ではブルガリア領内でトラキア時代の遺跡発掘が進み、黄金文明と呼べるほど大量かつ精巧な金細工が発見されています。
東トラキアはトルコのヨーロッパ部分です。
ヘルメスはオリュンポス十二神の一柱で、旅人、泥棒、商業、羊飼いの守護神であり、神々の【伝令役】を務めるギリシアの青年神のことです。
他にも能弁、体育技能、眠り、夢の神とも言われ、その聖獣鳥はカメと雄鶏。
ヘルメスと彼を現す事柄から、それらの比喩として考えられる項目は以下の通りです。
【オリュンポス12神の一柱】→オリジナルの12螺旋の遺伝子の中の一本
【旅人】→移動する→遺伝子は過去から未来へ旅をするように変化します。
【泥棒】→盗む→遺伝子はその他の情報を複製して取り込みます
【商業】→商業の基本は交換→遺伝子は交換されます
【羊飼いの守護神】→人間または体内で飼っているもの→バクテリア→ミトコンドリアの守護神→肉体にエネルギーを与え保っています。
【神々の伝令役】→エネルギーの伝令を行う→遺伝子の伝令によって様々な部位が構成されます
【青年神】→青年とは「若い」という意味→ヘルメスはオリンピアン12神の中で2番目に若い神→古い遺伝子ではなく新しい遺伝子
【能弁】→いろいろと語りかける→様々なものと交流する
【体育技能】→反射神経
【聖鳥:雄鶏】→脊索動物門 Chordata→脊椎動物亜門 Vertebrata→鳥綱 Aves→キジ目 Galliformes→キジ科 Phasianidae→ヤケイ属Gallus→セキショクヤケイgallus
【聖動物:カメ(亀)】→脊索動物門→爬虫綱→カメ目に分類される生物
ヘルメスはギリシア神話の主神である全能の存在ゼウスと、女神プレイアデス七姉妹の長女マイアとの間に生まれた子です。
【女神プレイアデス七姉妹】 はプレアデス星団に絡みますが、こちらは別の記事で書いてみます。
ヘルメスの父親である【天空神ゼウス】は社会秩序、天候、特に【雷】を司り、オリュンポス十二神をはじめとする神々の王です。
ゼウスの波動はプラズマ的なエネルギーが主体で12神=12の遺伝子をまとめる地位にあるということです。
ヘルメスの母親の【プレイアデスの女神マイア】 は父アトラスと母オセアニドのプレイオネの間に誕生したプレイアデス7姉妹の長女です。
ヘルメス誕生の神話では、ゼウスはオリュンポス神族の伝令として働く新しい神を作るために、正妻ヘーラーに気付かれないように夜中にこっそりと抜け出しました。
ゼウスが秘密裏にマイアに会いに行くことでヘルメスに与えられたのが「泥棒の才能」です。
泥暴→分からないように「秘密裏に事を成す力」です。
ゼウスがマイアとの密通の行いを正妻ヘーラーに隠し通すことで与えられたのが「嘘の才能」→真実を隠す力。
【眠り+夢の神】→副交感神経→デルタ波→覚えてない→真実を知らせない、隠されている
ヘルメスは12神の中でも特にゼウスの忠実な部下として働き、多くの密命を果たしました。
その代表的な伝令が「百眼の巨人アルゴスの殺害」です。
伝令神ヘルメスは「頭に丸い翼の付いたペタソス(旅行帽)」を被った姿で表されます。
上のイラストは世界中に残されている羽のついた円盤を描いたシンボルで、ヘルメスの羽のついた帽子も同じような位置で捉えられることがあります。
ヘルメスが持っているのが神々の伝令の証である杖・ケーリュケイオン
このケーリュケイオンの表現のされ方には色んなデザインがあります。
上の写真の中での杖の表現に羽はなく、一本の杖に一匹の蛇が絡んでいるようには見えません。
下のイラストには履く事によって空を飛ぶ事ができるとされる、黄金の翼が付いた魔法のサンダル「タラリア」も描かれています。
以上の作品のようにヘルメスの姿を描いたものの中で、その特性を現しているモチーフ類の描かれ方は、作家の視点と時代によって形が変化していきます。
後に伝令杖・ケーリュケイオンは近代になるにつれて二匹の蛇が絡んでいる羽の生えたデザインが主流になります。
しかし古代の陶器などに描かれている杖には羽が生えていません。
また蛇が絡んでいるようにも描かれてはいません。
ヘルメスはギリシャ神話の中の名前で、ローマ神話の中では【メルクリウス(マーキュリー)】と名前を変えます。
メルクリウス(Mercurius)は、ローマ神話に登場する商業の神さまです。
英語読みはマーキュリー(Mercury)
▲フランスの博物館にある羽のない杖を持つマーキュリー
▲モダンヴァージョンで翻訳されたマーキュリー
マーキュリーというの水銀のことで、占星学で「水星」のことを指します。
水星(すいせい、英:Mercury、羅: Mercuriusメルクリウス)
太陽に最も近い公転軌道を周回している惑星の1つ。
岩石質の「地球型惑星」に分類され、太陽系惑星の中で大きさ、質量ともに最小。
水星は59日という遅い自転速度であるにもかかわらず、地球の磁気圏の約1.1%に相当する比較的強い4.9×1012Tの磁気圏を持つことがマリナー10号の観測で発見されています。
マリナー10号の観測では、夜側の磁場圏でエネルギーの低い【プラズマ】が観測され、高エネルギー粒子の噴出も見つかり、これは惑星磁気圏の高い活動を示しています。
2008年にメッセンジャーが2度目のフライバイを 行った際に、800kmの長さに伸びた竜巻のようにねじれた磁気の束と遭遇しました。
この磁気の束は惑星の磁場と繋がったままで、水星の1/3の半径に相当します。
これは水星の磁場が「漏 れやすい」性質を持つことを示す。
この竜巻は太陽風が運んだ磁場と惑星の磁場が接触した際に発生し、太陽風の通過とともにそれに繋がった磁場が引き出されてヴォルテックス(渦)のような、ねじれの構造になります。
このような、惑星磁場の磁力管が太陽風によって引っぱり出される現象(磁束輸送事象)は、磁場の壁に穴を空けてしまい、そこから水星表面に影響を及ぼす太陽風が吹き込む事態を起こします。
このような磁気再結合と呼ばれる現象は珍しくなく、地球でも起こっています。
現在の観測では水星でこれが生じる速度は地球よりも10倍も速いそうです。
太陽風が惑星的に磁場の変調を起こすということは、それと同じ現象が人体にも起こるということです。
そして二匹の蛇の絡んでいる杖を持っているのはヘルメスだけではありません。