2007/06/11

神掌の中で:In God's Hands (1998)



イン・ゴッズ・ハンズ
In God's Hands (1998)

Actors: Shane Dorian, Matt George, Matty Liu, Shaun Tomson, Maylin Pultar
Directors: Zalman King
Studio: Sony Pictures
DVD Release Date: October 14, 1998
Run Time: 97 minutes

三人のプロ・サーキットから離れたサーファーが南アフリカ、タヒチ、バリ島というエキゾチックな国々の海の波を乗りこなしながらそれぞれのカルチャーや地元の人々と出会ってゆきます。

三人はその場所での波と人々への尊厳を受け取りながら成長し、ハワイのノースショアで長巨大な波を乗りこなすための訓練を受け始め、一大目標のハワイへと辿り着きます。

「ワイルド・オーキッド」、「レッド・シューズ・ダイアリー」というを手がけたザルマン・キング監督が描く、波乗りに見せられたサーファーと彼らを取り巻く人々の生き様を描いた話題作。

この監督は湿度のある女性美を巡る官能モノが非常に巧いのですが、意外なテーマに挑戦していたんですね。


とにかく、これは凄かったです。ものすごく感動しました。

正直な話、前半はかなり「これは駄目かな?」という感じが付きまとうのですが、半ば以降から迫力で盛り返します。

何が凄いのかというと、後半の超巨大な波を乗りこなすサーフィンの映像です。

とにかく後半のシーンは震えるくらいに感動します。

自分の中の何がそんなに共鳴するのかと考えてみましたが、あまりにも凄すぎたので分析は止めました。

とにかくもの凄い質量のエネルギーが後半の波乗りのシーンに蓄積されているのを感じました。

わたしは別にサーフィンに系統しているわけではありませんけど、何となく漠然とですがサーフィンにのめり込む人々の気持ちが理解できるような気がしました。

人智を超えた自然の驚異に立ち向かうスピリット、精神というのは凄いものなのだと。


内面の恐れを極限にまで引き出してしまうくらいの巨大さに立ち向かって正面を切って乗りこなすことに挑戦するのは、勇気が云々というものは遥かに通り越して、もはや禅の粋をも通り越しています。

これは登山家や極限の秘境を冒険してやまない探検家の姿と同じものです。

あれだけの質量のエネルギーの渦の中に身をおいてその波を乗りこなす感覚というのは一体どういう感じなのかとても知りたいと思ってしまいました。

そのストイック性というのか、純粋さというのか、ある意味では果敢なさと言うものなのかも知れません。


「波乗り」というのは「ウェーブ」ということから、よくニューエイジの世界でも、一般的な精神世界の中でも比較的によく使われる言葉です。

なぜなら私たちは意識していようと意識していまいと、絶えずこの「ウェーブ」、意識の波に乗っているからです。

この「ウェーブ」を人生に例える場合も多々あります。

私たちは人生という名前の「波」を経験するために結晶化してこの現実に存在するからです。


自分よりも巨大なものを乗りこなす。
人智を超えた自然に果敢に立ち向かうというのは、ある意味でのエクスタシーに例えられるのかもしれません。

ある意味で彼らのようなサーファーというのは身をもって瞬間瞬間を極限的に感じきり、それを普遍化してしまいたいという内面の欲求があるのかもしれません。

オアフ島のノースショアはサーフィンのメッカで、この映画のクライマックスはそこで撮影されました。

プープーケアという地区はワイメア渓谷の海岸線の街で、そこから数多くのサーフ・ポイントが続いてゆきます。

このプープーケアの中にかの有名な「万歳パイプ・ライン」という冬場になると超巨大な波が逆巻いてパイプを作る一帯があるわけです。

凄く巨大な波になると50フィートにもなるそうです。

そんな化け物に生身で挑戦するのですから人間の精神というのはそれと同じくらいに凄いものなのでしょう。


人生の「波乗り」これは何をとっても同じものでユニヴァーサルなものです。

人生を乗りこなすというのは誰にでもが生まれ持っている課題です。そしてその方法は様々です。

自分の見つけたゴールを達成するにも様々な方法があります。結婚とか、出産とか、仕事での成功、名誉の獲得、創造性の開花、人生のゴールや目標はあげれば切がありません。

しかし実際にどれだけの人々が意識的に人生の目標を持っていて、それを目指しているのかは疑問符です。

多くの人は、ただ漠然と人生の波の中を漂流しているように見える場合も多々あります。

世の中には様々なスポーツがありますが、これほどまでに極限的なスポーツはないのではないかと思います。なぜなら一歩間違えば命を失ってしまうからです。

それでも懸命に巨大な波を乗りこなすことを止められない。

これは人生を辞められないのと同じ類のものです。

「その先になにが待っているの?」と女性が三人の中の一人に尋ねます。


そこには何があるのでしょう? 


これは永遠の問いかけのようなものです。


答えを探し続けることが人生の一部なのだと私は個人的に理解していますが、この「答え」というのは探せば切のない類のもので、答え探しの旅にひとたび出てしまうと、終着点というのは永遠にたどり着かないものなのだということに行き着きます。


私たちは肉体的な終着点にたどり着くまで、ただ乗りこなし続けなければならないわけです。


そこで問われるのが、それをどこまで楽しめるか。それをどこまで昇華できるかです。


この映画は見る人にその人の人生のあり方を問いただしてくれます。

情熱とか、愛情、冒険、生きることの意味とか、その果敢なさ。その精神性、精神性の放つエネルギーの膨大さとか。

この映画はダイバーの世界を描いた「ビッグ・ブルー」に共通するものがありますが、作品的には負けています。しかし、エネルギー的には圧倒的に上回っています。

人生の意味とか霊性とかスピリチュアルなことに情熱を感じている方には超お勧めだと思います。

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